鋳物職人のまちを体験できる、上質な1棟貸し町家ホテル
民家ホテル・金ノ三寸

富山県の歴史あるものづくりのまち、高岡市金屋町で鋳物製造を営む<四津川製作所>の四津川社長による新たな挑戦です。鋳物職人のまちの活性化と自社ブランド商品の魅力を感じてもらうために構想したのが、1棟貸切の町家に泊まってもらい「体験してもらう場」のプロジェクトです。

まちのメイン通りとなる石畳みの通り沿いにあった築90年以上経過した空き家2棟を宿泊施設にリノベーションしました。外観は、伝統的な意匠を復元し、内観はそれとのギャップを楽しんでもらうために、真鍮や銅などの金物、伝統の着色技術を多用したモダンなデザインに。

photo:八/さりげなく上質な寝室

建築デザインのこだわりは、町家の持つ伝統的な建築意匠をそのまま残しながら、まったく異質な存在をいかに自然な存在として見せるか、という課題に取組んだことです。例えば、古い柱と漆喰の壁で構成された和の空間に、間接照明を仕込んだ真鍮製のディスプレーシェルフを堂々と設置することです。和の空間には伝統的な寸法が存在します。その寸法や縦横比率を上手にデザインに取り入れることにより、異質な存在が和の空間に違和感なく溶け込んでいきます。

photo:月/ブランコのある中庭

また、宿泊施設である以上は室内の気温や明かりの快適性は非常に重要なことです。「古民家だから仕方ない、暑さ寒さも楽しむ」とは思えません。人が気持ち良いと感じる空間の仕切り、人が楽しいと感じる視覚的なデザイン性、人が安全と感じる建築素材の上質さは、快適であることの基礎の上に成り立っているべきことです。民家ホテル「金ノ三寸」のリノベーション工事は決して簡単なものではありませんでした。部分解体を進める過程で何度も容赦ない問題が見つかりました。しかしクリエイティブの神様は私たちを裏切りません。難しい課題を考え抜いた先には、ワクワクするような結果が待っているものです。

photo:月/低い天井をプラスに変えた空間

例えば、1階の天井があまりにも低すぎて、このままでは快適な空間を作り出すことが難しいという問題がありました。しかし、思い切って床を落とし、土間の高さを基準に空間づくりを考えました。すると次に「さらに床が低い場所をつくったら面白いかも」というアイデアが浮かび、最終的には遊び心を感じてもらえるようなワクワクした空間をデザインすることができました。

【GOOD DESIGN AWARD 2021受賞】

  • ADDRESS:富山県高岡市金屋町4-12
  • WORK:総合プロデュース・空間デザイン・インテリアデザイン・アートディレクション
  • Owner:合同会社葉月
  • web siteマチザイノミチ